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広島地方裁判所 昭和61年(わ)536号 判決

本店所在地

広島県比婆郡東城町大字川西四九六番地の一

株式会社川崎屋

右代表者代表取締役

広島県比婆郡東城町大字東城三〇九番地の五

横山眞喜男

本籍

広島県比婆郡東城町大字東城三〇九番地の五

住居

右同所

会社役員

横山壽男

昭和一六年六月一七日生

右の者らに対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は検察官高口英徳出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社川崎屋を罰金四五〇万円に、被告人横山壽男を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人横山壽男に対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社川崎屋(以下「被告会社」という。)は、広島県比婆郡東城町大字川西四九六番地の一に本店を置き、豆腐及びこんにゃくの製造販売並びにアイスクリーム及び冷凍食品の販売を業とするものであり、被告人横山壽男(以下「被告人」という。)は、被告会社の専務取締役としてその業務全般を総括するものであるが、被告人おいて、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空仕入れを計上する等の方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和五六年四月一日から同五七年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二〇三六万五四五八円であったにもかかわらず、同年五月三一日、広島県庄原市三日市町大字下の原六六七番地の五所在の庄原税務署において、同税署長に対し、その所得金額が八四万九五七三円でこれに対する法人税額が二五万四七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額七五九万三三〇〇円と右申告税額との差額七三三万八六〇〇円を免れ

第二  昭和五七年四月一日から同五八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一二七六万五一六九円であったにもかかわらず、同年五月三一日、前記庄原税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三〇万六三一一円でこれに対する法人税額が九万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期期限を徒過させ、もて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四四〇万一三〇〇円と右申告税額との差額四三〇万九五〇〇円を免れ

第三  昭和五八年四月一日から同五九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二一九二万九七九円であったにもかかわらず、同年五月三一日、前記庄原税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七万七二四三円でこれに対する法人税額が二万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのま法定納期を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額八二四万六四〇〇円と右申告税額との差額八二二万三三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人横山壽男の当公判廷における供述

一  被告人横山壽男の検察官に対する供述調書及び収税官吏に対する質問てん末書一一通

一  横山秀子の検察官に対する供述調書及び収税官吏に対する質問てん末書二六通

一  岡本俊夫、小田馨、森泰三、川西利隆、朝倉留子、竹本繁子(六通)及び芳賀健二(二通)の収税官吏に対する各質問てん末書

一  広島法務局東城出張所登記官作成の商業登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書綴一冊(昭和六一年押第一一四号の1)

一  収税官吏作成の「脱税額計算書説明資料」、「売上高調査書」、「商品仕入高調査書」、「材料仕入高調査書」、「期末原材料貯蔵品棚卸高調査書」、「減価償却費調査書」、「受取利息調査書」、「雑収入調査書」、「支払利息割引料調査書」、「特別減価償却費調査書」、「事業税調査書」、「その他所得調査書」、「現金調査書」、「預金調査書」、「売掛金調査書」、「原材料調査書」、「前渡金調査書」、「機械装置調査書」、「買掛金調査書」、「長期借入金調査書」、「未払事業税調査書」、「社長勘定調査書」及び「P/Lとの不突合額調査書」と題する各書面

一  庄原税務署長作成の青色申告の承認の取消通知書謄本

判示第一の事実について

一  中本百三の収税官吏に対する質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(ただし、証拠番号検4号のもの)

判示第一及び第三の各事実について

一  梅崎周似の収税官吏に対する質問てん末書

判示第二の事実について

一  藤井幸広の収税官吏に対する質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(ただし、証拠番号検5号のもの)

判示第二及び第三の各事実について

一  石田光志の収税官吏に対する質問てん末書

判示第三の事実について

一  下瀬真一の収税官吏に対する質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(ただし、証拠番号検5号のもの)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択することとし、被告人の右判事各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については判示第一ないし第三の各罪ごとに同法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑を科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、被告会社については同法四八条二項により所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金四五〇万円に処し、被告人については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人及び被告会社の両名に連帯して負担させることとする。

(量刑の理由)

本件は、三期にわたるほ脱税額合計約一九八七万円、ほ脱率約九八パーセントに達する法人のほ脱事犯で、健全な税政に対する国民の信頼を著しく損うものであり、その刑責も軽視し難いものがあり、ほ脱率の高さは特に注目せざるを得ないところ、他方、ほ脱の方法自体は比較的単純なものであること、既に修正申告額が完納されていること、被告人は国税当局による調査にも積極的に協力しており、改悛の情も認められること等斟酌すべき事情もあるので、これらの情状を総合考慮した上、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 長岡哲次)

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